夜学舎

太田明日香の本を出すレーベルです

どうやってZINEを営業するか

わたしは仕事柄よく人に「どうやって本を作るんですか」と聞かれることが多い。
それまでは一人ひとりその都度、聞かれたことを答えるみたいな感じだったけど、
せっかくの機会なので、「ZINEのとも」というシリーズとして、ZINEづくりのヒントを公開したいと思います。

どうか万国の「ZINEのとも」の皆様の参考になりますように!

5.営業の仕方
これまで制作の話をしていたのですが、先日荻窪にあるTitleという本屋の店主の辻山さんが書いているコラムを読んで、ZINE制作者の人にも営業時の注意を知ってもらいたいと思い、営業の話を書くことにします。

www.gentosha.jp

こちらのコラムは期間限定で見れなくなるものもあるので要約すると、

最近ZINEを置いてほしいと営業に来る人が増えたけど、何でも置くわけではない。
店と合わない場合や店で売るレベルに達していないときは置かないこともある。
わかってくれる人もいるけど、あからさまに落胆される場合もあって、断るのも難しい
というような内容です。特に、

困るのは、Titleがどういう店かを調べずに、「個人の自主製作の本も扱っているらしい」という理由だけで持って来られる場合です。「いや、絶対面白いから」と言われても、本屋のスペースは限られているうえに、店に合わない本を並べていると、売れる本まで売れなくなります(本当です)。だから店に並べるものは、自主製作のものも、出版社が出しているものと同様に、置きたいと思うものは限られます。


 という部分は特に、耳が痛くなりました。
作ったからにはいろんな人に読んでもらいたいと思うし、お店で売ってほしいと思うのは、もちろんです。
わたしもZINEを作る人が増えてほしいと思うし、いろんな人が本作りを楽しんでもらいたいと思います。でも、そのことで逆に本屋さんに迷惑をかけたり、かえってZINEの取扱いを避けられるようになるのは本末転倒じゃないでしょうか。
では、どんな風に営業するとスムーズに取り扱ってもらえるのでしょう。


リサーチをする

辻山さんのコラムにもあった通り、まずはリサーチです。
最近は個人経営のセレクト書店でZINEを取り扱っているお店が増えてきました。
そういうところに1からしらみつぶしに営業をかけるのはよくありません。
ZINEを置く理由はお店によって様々でしょうが、店主の人がいいと思ったとか、客層に合っているとか、その店独自の個性を出したいとかいろいろあります。
だいたいZINEは普通の本の仕入れより手間もかかるし、利益も少ない場合が多いので(ZINEは安い)、それでも置いてもらうのはなかなかハードルが高いのです。

まずは自分の行ける範囲で、好きな感じとか合いそうな感じのお店から行ってみるといいと思います。
行ってやることはまず、置いてある本(特にZINE)と自分のZINEの類似分野の作品をよく見ます。そして、自分の本がこの店に合いそうかどうかを検討します。


その店で買い物してみる

もし合いそうだと思ったら次のステップです。
個人店の場合はお店の人の性格というのもあります。
ZINEならなんでもオッケーというタイプ、アート系が好き、文学系が好きといった好みもあります。どんな人かわからなかったら交渉できません。
だから店主としゃべれそうならしゃべってみましょう。
いきなり話しかけるのか? 
そうじゃありません、お店はレジというものがあります。そうです、何か買うのです。古本を取り扱っているお店だったら売りに行ってもいいかもしれません。
一回何か買ったりして関係性を作るというのは大事です。自分の本もこうやって売られるんだなーと想像できます。
だから、売り込みの前に一回買い物をした方がいいと思います。
そしてお会計時にそれとなく「自分もZINE作ってるんでよかったらこんど見てもらえませんか」と聞いてみましょう。そして、ちょっと興味を示されたお店に実際に売り込みに行ってみる、一歩ずつやってみるのがいいと思います。


取引条件を明確にする

実際に取引可能となったら、取引条件を聞かれます。
お店というのは、物を売って利益を得ているところです。
取引条件というのは、定価○○円の本をいくらで仕入れますよとか、委託(一定期間預かっておいて、売れなかったら返品)とか買い取り(お店が買いとってくれる)とか、清算の時期(毎月○日に請求書を送って○日に振込とか)とか、そういうのを交渉する必要があります。
たいていのお店は決まっているところが多いので合わせるか、自分でこんな感じでお願いしますと決めて打診するのでもいいと思います。
大体は制作者:お店で、7:3~6:4の割合が多いと思います。

たくさんのお店でおいてもらうべきか

これを読んでめんどくさそうと思った方もいるかもしれません。
しかし、わたしはたくさんの本屋さんに卸すことが重要だとは思いません。
たくさんのお店に置いてもらえるとたくさんの人の手に取ってもらえそうですが、その分手間も増えます。
ZINE制作一本でやっている方はいないと思いますので、販路は自分のできる範囲に抑える方がいいでしょう。
また、本当にそのお店にはまると、そのお店の定番商品のようになり、繰り返し注文が来るようになります。だから、無理して広げるよりも、まずは1店1店とのつながりを大事にすることが重要です。
そして、本の世界というのは結構狭い世界なので、評判になるZINEはツイッターや同業者の間で情報が回って、次回の営業から「知ってます」ということになったり、お店から問い合わせが来るようになったります。
1つのお店で取り扱ってもらえたらそれが実績になりますので、まずは1店どこかのお店で取り扱ってもらい、そことのお付き合いを丁寧に大事にやるのがいいと思います。

その前にはやはり、辻山さんの言う通り、ZINEの質です。
そこを上げていかないことには箸にも棒にもひっかかりません。
それについてはまた回を改めて。

 

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